女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



58 森を、でよう

 カイは歩きだす。森の出口に向かって。
 少年を探す友の声が、遠くで響いている。
 森を、出よう。
 僕は、僕自身の思い込みを改めないまま、今に至ったのだ。……答えはきっと、生まれてから今まで……そこかしこに落ちていたにもかかわらず。
 僕は確かに魔法は使えない。誰かに命を左右される可能性もある。それは、事実だ。そこから目をそらすよりも、確かに、僕はつらい選択をしたのだ。自分の無力を自覚してきたのだから。だが、それは、
「それは、自分が弱いということとは、関係のないことだったんだ」
 明理沙の励ます声が耳に残る。「大丈夫だよカイ」本当に、全く、魔法のまの字も使えない彼女の、声。しっかりした声が。そしてシルディの声が。「泣かないのカイ」
 彼女たちは強い。僕よりも魔法が使えないにもかかわらず。
 どうしてか。無力な彼女たちが、どうして僕より強くあれるのか。答えはもう、わかってる。
「強いとか、弱いとかいうのは。……今、自分ができることを、精一杯やってるか、それとも手を付けないでいるか、その違いなんだ」
 能力でも、天賦の才でもなく。そして、できないことを悲しむのではなく、それとして乗り越えること、自分が今はできないことを認めること、そして努力していくこと。それが、強さなんだ。他人と比べてどうということではなく、自分をどれだけ生かしきるか。そこなのだ。強さっていうのは、その人が、その人の能力の内でそれをどれだけ生かしているか、そういうことなんだ。
 そうして、精一杯やって、その中で初めて、自分の誇りが芽を出すんだ。
 少年は顔を上げた。
「僕は何も知らなかった」
 彼を呼ぶ、友の声が、そこまで聞こえて来ていた。

「カイ! 探した!」
「エフィル!」
 城がわの森の入り口から入って、森の5分の1の所で、エフィルはカイを見つけだすことができた。
「シルディが朝ごはんを用意してくれてる。明理沙はもう大丈夫だ。帰ろう、カイ」
 カイのところに駆け寄り、エフィルがそう告げると、カイは、うなずいた。
「探しに来てくれたのか、ありがとうエフィル」
 カイの表情の、微妙な変化に、エフィルは、おや、と思った。少し、しっかりしてきている。
「いや。じゃ、飛んで行こう。……どうも私は、ここにこれ以上いると参るような気がする」
 わずかに苦い表情のエフィルを見て、カイが意外そうに首をかしげる。
「どうしたんだ? エフィル。お前でもここで参るのか?」
「……ちょっとな。行こう、カイ」
「ああ!」




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