女の部屋を出た男は、城中を歩き回った。途中、すれ違った召し使いに尋ねた。
「ここの長女はどこにいる?」
召し使いは、にっこり微笑んで答えた。
「さあ?今は部屋にはおりませんけれど。どこに行かれたのかしら?あの方は行き先を教えてくださる方ではないから。少なくとも、城の中にはおりますわよ?」
何やら悠然と答える召し使いに、男は違和感を覚えた。
これは本当に召使いか?
客人に対する態度が、不遜だ。
「そうか」
そこまでで考えるのをやめ、男は自分で探すことにした。もうここは自分の城だ。召使いの再教育も、美しい娘への「躾」も、自分の思いのままなのだ。あせることはない。城内をくまなく見て回るのもいいだろう。
歩きだす男を、振り返った召使いが見て、くすくす笑った。
それに引かれたように、物陰から数人の召使いが出てきて、遠ざかる男の後ろ姿に、同じような忍び笑いを投げかけた。
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