「年相応につたない可愛い子だこと。これなら簡単に居場所がわかってしまうわ」
ニヤニヤ嗤いながら歩むクリスティーナに、私は、何度も何度も願う。
「頼む。この通りだ。手荒な真似はやめてくれ」
その度に、
「もちろん、嫌よ?」
と、満面の笑みを返される。
「頼む、クリスティーナ」
「嫌よ?」
彼女の足取りは、軽い重いという話ではなく、踊るようだ。何も知らない人間には、「よほど良いことがあったんだな」と見えるだろう。そして、おろおろと頼む私の姿は「よほど悪いことをしたんだろうな」と見えるだろう。
逆だ、と、声を大にして言いたい。
「クリスティーナ、止めよう。もう、いいじゃないか」
王宮魔法使いは、「ここだわ」、と、クスクス嗤いながら、街で一番大きな公園に入っていった。そこの中央には、河から水をひいた大きな池があり、舟遊びなどができる素敵な場所、などと、悠長に案内している場合ではない。
「待ってくれ!」
私は、思い切って、彼女の肩をつかみ、引き止めた。力ずくで止めたり、説得ができる相手ではないということは、十二分に重々承知の上だ。それでも。
「魔女狩りなんて、見たくないでしょう? 坊ちゃんは、お家にお帰りなさい」
ぐい、と、私の額を、魔法使いは指で押しやった。
「そうじゃなく。止めろと言ってるのだ」
「止めないわ? 私の仕事なの。あなたが決められるのは、着いてくるか帰るか、どちらかよ?」
ご機嫌な口調が、消えていた。
「……本気か」
クリスティーナの表情が鋭くなっている。
「邪魔をする気?」
私は、肩を落とし、そして、彼女から手を離した。
魔女の駆除。
王宮魔法使いの仕事だ。
私たち王族を守る、彼らの仕事。
あの時も、そう、初めて会った時もそうだった。彼女は、自分の腹を貫いてまで、私を守った。
「じゃあ、着いていくよ」
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