シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

103 沈む瞳と桜の頬は

 フロラは、昨日のことをプリムラに話した。
 やかんの音が、小気味良く鳴り始めた。
 フロラの手元には、できあがったタルトが並ぶ。一部は箱詰めにされている。
「どうしたらいいか、わからないわ」
 そう言って、フロラは困った様子で息をついた。
「私は、自分の気持ちがわからない」
 さらに吐息が加えられた。
「王子と踊れないのは寂しいけれど」
 青い瞳は深く沈んでいる。
「でも、友人として、寂しいと思っているのなら、私は我慢しなければならない」
 だが、目の表情とは対照的に、頬は桜色に上気している。
「……恋の寂しさは、わからないの。今まで、恋したことがないから」
 雨に打たれたように、フロラはうつむいた。
「馬鹿ね」
 プリムラは、冷たく言い放った。
「え?」
 フロラは顔を上げて、不機嫌なプリムラを見る。
 魔女は、そんな継妹の姿を、銀の瞳でじっと見つめ、放り出すように言った。
「それが恋っていうのよ」



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