「まあ。どこのガキもさっさと自立しちゃって、面白くないったらないわね」
すぐ近くで、笑み交じりの厭味な声だけが響いた。
魔女は「お帰りなさいませ師匠」と、抑揚も真心もなく迎えた。
孔雀色の長衣を翻して、魔法使いクリスティーナがプリムラの隣に現われる。
「あら。おいしそう。私も後でフロラからもらいましょう」
言いながら、ポットに茶葉を入れて、やかんからお湯を豪快に注ぐ。
師匠の作法に、弟子が顔を曇らせた。
「ちょっと。お湯が飛ぶでしょう? 熱いわ」
高い位置からポットに滝のように熱湯を注ぎいれるので、遠慮なく飛沫が飛ぶ。
至極正当な抗議に、クリスティーナはしかし魔法使いなので謝りもせず、むしろ、かえって気分を害した。
「こうるさいガキねえ? せんせいがお茶を入れてやってくださっているんだから、小さくなって有り難がってればいいのよ」
弟子も魔女なので、冷笑で応じる。
「確かに珍しいわね。毒でも仕込むつもり?」
魔法使いは微笑した。
「正直なことね。お湯をかけられたいの?」
|