シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

26 沈む王子

「フロラ、大丈夫?」
 先に階段を駆け下りる王子は、振り返って気遣った。
 フローレンスは丈の長い服を着ているので、階段ですそでも踏んだら危ない。
 王子の言葉に、優しい微笑みが返った。
「ええ。どうぞ、わたくしには構わずに、先に行ってください」
「うん……」
 だが、王子は曇った声で応じると、立ち止まった。
 二階から一階に下りる階段の途中だった。
 走るのを止めた王子に、フローレンスは首を傾げた。
「王子?」
 王子は、軽く微笑む。
「しばらく大学の方には来ない方がいいね。私は」
 薄い青紫の瞳が、少しかげっていた。
 王子は暗い銀の髪をかきやる。
「こんなことでは、他の学生たちに迷惑がかかる。王宮にこもっていた方が良さそうだ」



←戻る次へ→

inserted by FC2 system