「王子様」
その中心に立っている、薄茶色の巻き毛の令嬢が、代表して言った。乙女たちの中でも、とりわけ美しい令嬢だったが、少し化粧が濃い。
「これから申し上げます私の言葉は、どうぞ、あなた様に憧れる、取るに足らない小さな花のつぶやきだとお思いになって、広い心でお許しくださいまし」
彼女は愛らしいながらも、しとやかな微笑みを浮かべる。
「お一人、とは、そちらの美しい方のことですね?」
話題が、フロラのことになった。
王子は、内心では「ほらきた」と肩をすくめながら、優雅にうなずいた。
「ええ。ガーネット嬢」
ガーネットは、にっこり笑った。
「拙家、ファセットの舞踏会にも、ご一緒にいらっしゃいましたね。覚えております」
「ええ」
王子のうなずきに対して、ガーネットは可憐に微笑んだ。
「王子様。わたくしはそちらの美しい方と、一度、お話したいと思っておりましたの。中々お近づきになる機会がなくて」
「フローレンス嬢と?」
「はい。是非」
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