「まあフロラ。もう起きたの? ああそうね。ごめんなさい。うるさかったかしら?」
部屋に入ってきたフロラを、クリスティーナは満面の笑みと、溢れる愛情とで迎えた。
プリムラに対する態度とは全く逆だった。
そして表情を一変させて、憎々しく舌打ちする。
「チッ! あのガキがなかなか起きないものだから」
それを見るフロラの顔は、浮かないものになる。
「でもクリスティーナさん、プリムラは昨日……」
クリスティーナは、フロラの言葉を封じるようににっこり笑う。
「いいのよあんなガキ。痛い目に遭ってあらゆる苦労をすればいいの」
「そんな……」
フロラは、クリスティーナから聞いた恐ろしい話を思い返した。
昨日プリムラは、クリスティーナに全身を縛られて海に落とされたらしい。それも、陸地から近い場所ではなく、三六〇度水平線しか見えないほどの沖で。その上、フロラの目の色のように深い海だった。クリスティーナは空に浮かびながら「死にたくなかったら、魔法を使ってここまで上がって来なさい」と言って見下ろしていた。
クリスティーナは、微笑んだまま言った。
「昨日は残念なことに、死なずに生き残ったわ。しぶといったらないわ。まったく」
「クリスティーナさん、ひどい!」
フロラは思わず声を上げた。
|