シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

40 魔法使いの素顔

 クリスティーナは失笑した。
「お顔が大変なことになっているわよ?」
「まあ、大変」
 ガーネットは顔に手をやる。しかし、慌てたり恥ずかしがったりはせずに、おっとりと構えている。こんなところに、満たされた境遇で育てられた鷹揚さが表われている。
「お化粧はこれだから。ふふふ」
 が、ふと、何かに気付いた様子でにっこり笑った。
「わたくしの正体をご存知の方々ばかりだから、隠す必要はありませんわね」
 そう言って、ファセット家の令嬢は、自分の顔を両手で覆って、ぶつぶつとつぶやいた。
 ぱっと手を離し、せいせいして微笑む。
「ふふっ。これですっきりしました」
 ガーネットは魔法で化粧をすっかり取り除いていた。
 するとそこには、今までとはまるで違う雰囲気の少女がいた。
 さきほどまでは、愛らしい可愛さの漂う令嬢だった。素顔の今は、春の宵闇に幻出した夜桜の精のような、妖しげな艶やかさを放っている。青みすら感じさせる白肌は濡れたように潤い、唇は鮮血の中にさらに紅を混ぜたように赤い。
「この顔のままでは、美しすぎて魔女だとわかってしまいますもの。お化粧して、派手派手しくない適当な美しさにしなければ、外には出られませんわ。わたくしはファセットの令嬢ですもの」



←戻る次へ→

inserted by FC2 system