王子とフロラは、それぞれに考えながら、大学の広場を横切る。
二人とも、魔法使いが残した言葉について、深刻に悩んでいた。
王子は、フロラへ想いを告げるべきか否か。
フロラは、プリムラの安否を。
二人は同時に、重く長い息を吐いた。
そして、はっとしてお互いを見合う。
「どうしました? 王子」
「いや、私は……なにも。そう、ただ、クリスティーナにいびられて参ってただけ」
内心ひやひやしながら、王子は問い返した。
「フロラはどうしたの?」
フロラは弱い微笑みを浮かべる。
「プリムラが無事かどうか。考えていました」
「ああ。それでためいきを」
王子は心から納得した。
「彼女、クリスティーナにしごかれているんだものね。心配だね。それは」
「はい……」
うつむくフロラ。
王子は、フロラのことをできるかぎり励ましたいと思った。魔法使いになるのは過酷なことこの上ないが。せめてもの救いは、本人たちの生命力がしぶとすぎることだ。
ファウナ王子は、明るく笑って元気に言った。
「大丈夫だよフロラ! 魔女って、丈夫なんだから。ほら、さっきのガーネット、見ただろう? 階段から落ちてもなんてことなかったし」
フロラは、王子の思いやりを汲むように、少し明るく微笑む。
「ええ」
しかしすぐに、心配そうな顔に戻った。
「でも、クリスティーナさん、とっても楽しそうなんです」
「……」
王子は言葉を失う。
あれが、楽しそうな顔をして、修行をさせているということは、
「それは……大変だね……」
「はい……」
二人は、重く息をついた。
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