すぎな之助(旧:歌帖楓月)
フロラは王子を見上げた。 そして労わりの微笑みを向けた。 「いいえ。わたくしはなにも。きっとそのうちに、静かになります」 「うん……」 王子はゆっくりうなずき、そしてフロラを見つめた。 「あのね、フロラ」 「王子。お待たせいたしました」 時計室に現れた第三の人物に、王子は内心で舌打ちした。 せっかく言い出す機会を見つけたと思ったら、邪魔をされた。 これは偶然ではない。故意にそうしたのだ。 なぜなら。 侍従長にして「魔法使い」の、くえない老翁が、二人の前に立っていたからだった。