王子は、咲いたばかりの花を見つけた気持ちになった。
「そう、だったんだ」
どうやら、フロラのことを勘違いしていたらしい。私は。
恋よりも、学究に興味があるのかと思っていた。教授の研究を継ぐことにのみ、喜びを見出しているのかと思っていた。
でも、そうではなかったようだ。
彼女は、自己の望みを見極めて悟った乙女ではなかった。
むしろ、逆だった。
知らないのだ。いや、知る暇がなかったのだ。生きるのにせいいっぱいで。
だから、
目の前に座っているのは、恋をしたことがない新雪のような乙女。
ああ。
それなら、少しは、希望が持てる。
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