王宮の敷地に入り、広大な庭園を貫く一本の道を通り抜けると、建物に着く。
大広間の入り口に続く、長く広い階段が来客を迎える。階段には赤いじゅうたんが敷かれている。両脇にはたくさんの明かりが灯され、色鮮やかな花々が飾られている。
立派な身なりや華やかないでたちをした沢山の招待客が、誇らしげな笑みを浮かべてにぎやかに行きかう。
馬車は、階段の下にある車止めで止まった。
差し出された従者の手に手を乗せて、重さを感じさせない優雅な動作で馬車から降りる。
その姫の清純な美しさは、あでやかな夜の王宮を白くかすませるようだった。通りかかる多くの者が見とれていく。
「クリスティーナさんの言ったとおり、すそを踏まないように気をつけなければ」
長いすそを見下ろし、階段を見上げて静かに微笑むフローレンスを、従者が「いってらっしゃいませ」と送り出す。
フロラのまわりに、四人の美しい侍女がつく。彼女たちの正体はハツカネズミ。かつては灰色の城で、プリムラの身の回りの世話をしていた。また、孤独だったフロラの友達でもあった。
「まいりましょうか? フローレンス様」
四人は恭しく微笑む。
「ええ」
白金の姫は、王子の待つ大広間へと、階段を昇る。
|